映画レビュー

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ジワる恐怖と見事な伏線回収、『ゲット・アウト』は人種を描くが純然たるスリラー映画の傑作だ

  • 2021.09.08

アフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、恋人のローズの実家に招待される。クリスはローズが「恋人が黒人だと言っていない」というのを聞いて不安になるが、ローズの家族は進歩的な一家だと聞いて一応納得する。 郊外の大きな邸宅についたクリスは、そこで働く黒人の雇い人の様子に違和感を覚え、ローズの弟ジェレミーの粗暴な言動や、それを咎める家族にもどこか違和感を感じるが、ローズのためと我慢をしてその日は眠りにつく。 […]

セックスは滑稽だ。ロマンポルノリブート作『風に濡れた女』で塩田明彦監督が描いたセックスと人生のおかしみ。

海辺で男(高介)が本を読んでいると、自転車に乗った女(汐里)がやってきて、そのまま海に突っ込む。海から上がった女は濡れたTシャツを脱ぎ、裸の胸をさらしてTシャツを絞る。 そんな始まり方も「ロマンポルノ」なので驚くことはない。しかし、このあとの展開は「ポルノ映画」のイメージとは異なり、映画らしい余白を含んだ「純文学」的なものだ。 シュールなコメディとしてのセックス この映画にはストーリーがないという […]

人間は救いようがない、B級ホラーコメディ『ゾンビーバー』の笑えない結末。

アクシデントで湖に流れ出てしまった汚染物質で一帯のビーバーがゾンビになって人を襲うというB級ホラーコメディ『ゾンビーバー』。低予算で、ヒットもしなかった低俗映画です。 映画の中身も手作り感満載で、主な登場人物は頭の悪い大学生たちで、とにかく救いようのない映画です。それでも、こういうゾンビもの、パニックものは登場人物が成長して、団結して驚異と立ち向かうという展開になっていくもの、そんな期待をして映画 […]

川島雄三のハチャメチャコメディの怪作『グラマ島の誘惑』

第二次大戦中、グラマ島という無人島に船が着いた。しかし、船は2人の“宮様”を含む3人の軍人を残して沈んでしまった。そしてその島に残ったのはその3人の軍人と報道部隊の2人の女性隊員、5人の慰安婦、1人の戦争未亡人、そして1人の原住民だけだった。 日活を離れた川島雄三の後期のコメディ。かなり破天荒な映画の作りで、いい仕上がりのB級映画という趣き。 1959年,日本,106分監督:川島雄三原作:飯島匡脚 […]

『悪名』シリーズは第一作から勝新太郎と田宮二郎の魅力が爆発

映画『悪名』の概要 松島の遊郭で暴れていた土地のやくざ吉岡組の貞を、その遊郭の琴糸のところに遊びに来ていた朝吉がぶちのめした。そのことで組の親分吉岡に認められた朝吉は吉岡組の客となるが、琴糸の足抜きをしようとして失敗してしまう… 当時のベストセラーを大映の職人監督田中徳三が映画化。カメラは宮川一夫、勝新と玉緒の共演など、見どころもいろいろ。 1961年,日本,94分監督:田中徳三原作:今東光脚本: […]

嫁と姑も女と女である、『華岡青洲の妻』があまりに増村保造らしい理由とは

映画『華岡青洲の妻』の概要 田舎の武家の娘である加恵(若尾文子)は近くの田舎医者・華岡直道の評判の妻であるお継(高峰秀子)に憧れを抱いていた。華岡家の息子・青州に妻にと請われた加恵は父の反対を押し切って華岡家に嫁いだ。最初は仲睦まじくやっていた加恵とお継だったが、留守にしていた夫の雲平(青洲)が帰ってくると、徐々に関係に変化が現れてくる… 江戸時代の実在の医者華岡青洲を描いた有吉佐和子のベストセラ […]

家族から社会を観察する小津の真骨頂、『彼岸花』に加えられたひねりが描く「変化」とは

映画『彼岸花』の概要 友人の娘の結婚式に出席した平山は自分の娘もそろそろ嫁にやる時期だと考え、娘の縁談を進めようとし、娘の節子も特にいやな顔をしなかった。そんな時、京都から佐々木親子が訪ねてくる。その娘幸子も年頃で母親はいい縁談を探しているが、娘はあまり乗り気ではない。そこで節子と幸子は同盟を結んでお互い困ったときには助け合おうと話し合う… 父と娘の関係を描いた小津後期の作品のひとつ。小津はこの作 […]

淡島千景と森繁久彌が好演する夫婦関係の機微『夫婦善哉』

映画『夫婦善哉』の概要 化粧問屋の若旦那柳吉は売れっ子芸者の蝶子に入れあげ、父親に勘当されてしまう。柳吉は蝶子とふたり駆け落ちすることにし、柳吉に惚れ込んでいた蝶子もそれを受け入れて二人で暮らし始めた。しかしもともとがボンボンの柳吉は働きもせず、蝶子は再び芸者として働き始める。家にいつかは帰れると思っていた柳吉だったが、妹の筆子が婿養子を迎えることを知って絶望してしまう… 織田作之助の名作『夫婦善 […]

戦争の記憶が生々しい時代のリアリティと失われた素朴さが感動を呼ぶ『二十四の瞳』

映画『二十四の瞳』の概要 昭和初期、瀬戸内海は小豆島の小さな村、子供たちは本校に通うまでの3年間を岬の分教場で過ごす。その分教場に新しい先生がやってきた。その大石先生は洋服で自転車に乗って分教場にやってくるハイカラな先生だった。もう一人の先生や父兄たちはそんな先生をなかなか受け入れようとしないが、とうの大石先生は子供たちに明るく接し、子供たちも先生を受け入れていったが… 映画化の2年前に書かれた壺 […]

原作の姉弟を逆転させらしさを出した溝口の『山椒大夫』の緊張感

映画『山椒大夫』の概要 時は平安末期、農民の窮乏を救うために鎮守府から咎を受け流された平正氏の妻玉木とその子厨子王と安寿は友をひとり連れての旅の途中、物騒など言う土地で人さらいにあい、玉木は佐渡の売春宿へ、厨子王と安寿は丹後の山椒大夫の荘園に奴婢として売られてしまった。厨子王と安寿はひたすら10年間堪え続けていたが、新しくやってきた娘の口から、彼ら自身のことが歌われた歌を聴く… 森鴎外が古い説話を […]

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