映画レビュー

2/9ページ

高峰秀子の純愛を木下恵介がゆったりと描く『女の園』

映画『女の園』の概要 京都の正倫女子大学、良妻賢母の教育をモットーとするこの学校の学則は厳しく、特に寮母の五条真弓はことあるごとに学生たちに厳しく当たっていた。そんな中、出石芳江は勉強についていけず、東京の恋人との関係も非難されて神経衰弱に陥りつつあった。また財閥の娘である林野明子は学校から特別扱いされている自分に反発するように学校の改革運動に没頭していた。 女性の解放、労働運動など時代の空気を強 […]

溝口の「間」と祇園の行く末を描いた名作『祇園囃子』

映画『祇園囃子』の概要 芸者の娘栄子は、母を亡くし、叔父に邪険にされ、零落した父親を頼ることもできず、母の昔の仲間を頼って祇園にやってきた。一軒の館を構える芸者美代春は保証人のなり手もない栄子を芸者として仕込むことに決めた。一年あまりの稽古を終え、美代春の妹美代栄としてはれて舞妓になった栄子だったが、その世界ははたから見るほどきれいなものではなかった… 溝口、宮川に脂の乗り切った木暮美千代、そして […]

群像劇の元祖『グランド・ホテル』の“映画が匂い立つ瞬間”に映画の本質を見る

映画『グランド・ホテル』の概要 ベルリン随一のホテル“グランド・ホテル”には、様々な人が滞在している。余命いくばくもないと診断されたクリングラインは全財産をはたいて贅沢をしようとやってくる。彼に親切にする男爵はロシア人のプリマドンナ、マダム・グルシンスカヤを追いかけつつ、仕事にやってきた速記者にも声をかける伊達男だ。 後に、特定の場所に集まった様々な人々の人間模様を描く手法を“グランド・ホテル形式 […]

岡本喜八監督『殺人狂時代』の奇妙な映像とアクション映画としての面白さと「狂気と戦争」

映画『殺人狂時代』の概要 精神病院を営む溝呂木は大日本人口調節審議会なるものを秘密裏に設立し、ナチスの残党とともに人口調整のために無駄な人間を殺すことを計画していた。犯罪心理学者の桔梗信治のところにも間淵という殺し屋が差し向けられるが、間淵は桔梗の亡き母のブロンズ像にぶつかってあえなく死んでしまう。しかし、その後、桔梗に次々と殺し屋が差し向けられる… 都筑道夫の「飢えた遺産」を岡本喜八が監督したア […]

『東京オリンピック』競技者の生々しさと束の間の平和の眩しさ

映画『東京オリンピック』の概要 1964年、東京で開かれた第18回オリンピック。日本がこれまでに経験したことのない規模で行われたスポーツイベントを巨匠・市川崑が記録し、映画化した作品。聖歌がギリシャで点火されるところから、開会式、各競技、閉会式まで、時に全体を俯瞰し、時にひとりの人間を追い、余すところなく伝えた3時間近い力作。 公開されたのは、オリンピックが開催された翌年だったが、人々の記憶に新し […]

今村昌平が『にっぽん昆虫記』で描く「方言」「神」「売春」そして「女」

映画『にっぽん昆虫記』の概要 母親の松木えんが婿をもらって2ヶ月目に生まれた娘とめ、少し抜けた夫を尻目に母親は乱れた生活を続けるが、とめはそこで育って行った。とめは戦争中女工となったが、地主の家に嫁にやられ娘信子を生んで帰って来る。戦後は工場に戻るが、組合活動に参加したことで会社をクビになり単身上京、メイドとして働くが… 今村昌平が実際に売春斡旋業をしていた女性にその半生を聞き、それをもとにシナリ […]

『キューポラのある街』は高度成長期の日本が若者に託した希望そのもの

映画『キューポラのある街』の概要 キューポラと呼ばれる煙突が立ち並ぶ鋳物の町・川口、そこに住むジュンの父は熟練工だが、工場が買収されたことでクビになり、徐々に自暴自棄に陥っていく。ジュンはそんな父を見ながら、自分の力で高校へ行こうとパチンコ屋でアルバイトを始めるが、弟のタカユキがチンピラに屑鉄盗みに引っ張られていったりと苦難ばかりが降りかかる… 吉永小百合を主演に、高度経済成長に差し掛かる日本の姿 […]

溝口健二が国際的評価を得た『雨月物語』のアンチクライマックスと引き込まれるドラマ

黒澤、小津に次ぐ巨匠とも賞される溝口健二の代表作の一つがこの『雨月物語』。江戸時代の文学を翻案し、時代劇ながら現代的なドラマに仕上げています。ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を得たこともあり、海外の批評家にも引き合いが出されることの多い作品です。 映画『雨月物語』の概要 戦国時代、近江の国の農村で焼き物を作っていた源十郎は戦に乗じて町で焼き物を売り小金を手にする。女房の宮木の喜ぶ顔を見て調子に乗った源十 […]

『幕末太陽傳』でぶつかる川島雄三とフランキー堺と石原裕次郎の魅力

日本映画史に個性派として名前を残す川島雄三。独特の色彩感覚と軽妙な語り口でファンが多い監督のひとりです。その川島雄三の代表作の一つが『幕末太陽傳』。当時人気のフランキー堺を主演に、のちのスターとなる石原裕次郎や芦川いづみも出演しています。 映画『幕末太陽傳』の概要 1957年,日本,110分監督:川島雄三脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平撮影:高村倉太郎音楽:黛敏郎出演:フランキー堺、左幸子、南田 […]

『銀座化粧』で成瀬巳喜男が田中絹代に演じさせた「女」と「母」の葛藤

日本映画を代表する監督のひとり成瀬巳喜男は一貫して「女」を描いてきました。数多くの作品で主演女優として起用した高峰秀子は成瀬の「女」を体現し、黄金時代を築きました。 そんな成瀬が田中絹代を主演に迎えた作品がこの『銀座化粧』です。別の女優を介して成瀬はどのような「女」を描いたのでしょうか。 この『銀座化粧』が見られるVOD、この作品を見た「次」に見るべき作品も紹介します。 映画『銀座化粧』の概要 1 […]

1 2 9