『ピンクリボン』が描くもう一つの日本映画史。ピンク映画が日本映画を守った?
映画『ピンクリボン』の概要
毎年優秀なピンク映画作品や監督、女優に贈られる「ピンクリボン賞」をきっかけに、生まれて約50年というピンク映画の歴史を紐解いたドキュメンタリー映画。
ピンク映画はポルノ映画と異なり、インディペンデントな制作会社が作った成人向けイエガで、そこには独立の精神が生きていた。今も年間100本近く作られている秘密はどこにあるのか藤井謙二郎監督が迫った。
2004年/日本/118分
監督・撮影:藤井謙二郎
出演:黒沢清、高橋伴明、井筒和幸、女池充、吉行由実、若松孝二、渡辺護
ピンク映画とポルノ映画
映画に最初に登場するのは黒沢清監督。巨匠とは言わないまでも大物監督の一人といっていい監督が最初に撮った商業映画はピンク映画でした。映画マニアには知られた事実で、一般映画デビューとなった『ドレミファ娘の血は騒ぐ』ももともとは日活ロマンポルノとして企画されたものだということも知られています。
そこから、ピンク映画の歴史を掘り下げ、もう一つの日本映画史のようなものを描いていきます。
そもそもピンク映画が誕生したのは1962年と言われていて、表現規制を逃れられるギリギリのところで戦ってきたといいます。その中から生まれたのが若松孝二や高橋伴明といったインディペンデントの映画監督。ピンク映画をたくさん撮った上で、一般映画に進出しています。
それに対して日活ロマンポルノは1971年にピンク映画の人気を受けて誕生、それまでのピンク映画とは違って潤沢な予算を使い、人気監督や人気女優を生みました。しかし、アダルトビデオに押されて衰退していき、1988年には終了します。それでもピンク映画は生き残り、今でも作られ続けているのです。
なぜピンク映画は生き残っているのか、独特な映画表現とは何なのか、そのあたりがこの映画の面白いところです。
ピンクでしか撮れない映画
ピンク映画の女優兼監督である吉行由実が「ピンク映画でしか撮れないもの」があって、自分は恋愛ドラマだと思って撮っていると発言するシーンで、「ドラマなんかだとキスした後すぐ次の日の朝になっているのはおかしい」と発言するのを聞いて、確かになと思いました。そこの部分も恋愛において大切であるはずなのに、それは表現できない。それって表現にとってマイナスじゃないか、ピンク映画への成約は一般映画の表現も貧しいものにしてしまっているのではないかと思ったのです。
つまり、この映画が描いているのは日本の表現規制のおかしさ。ピンク映画でも腰を振る角度がずれていれば本当にやっているように見えないからいいとか、男女どちらかが全裸でなければいいとかわけのわからない規制がたくさんあったそうで、一体それになんの意味があるんだと失笑せざるを得ないのです。
規制は表現の工夫を生むという意味でプラスに働くこともあるんですが、さすがにこれは意味がないなと。なんのための規制かわからないし、その表現が規制逃れ以外の役に立つとも思えないわけですから。
でも、ピンク映画が人材を育てたり、低予算で映画を作るノウハウを溜め込んだりして、一般映画に貢献している部分があることも確かなのです。
ただ、この映画が光を当てようとしているのはその部分ではなく、ピンク映画そのものの魅力のような気もします。ピンク映画でしかできない表現があり、それが魅力になってハマる人もいる。ピンク映画を映画の一ジャンルとして考えれば、面白いんじゃないかということなのではないでしょうか。
もちろん好き嫌いはありますが、こんな表現もあるんだということは知っておいて損はないし、新東宝の営業部長が一般の映画館で女性限定のオールナイトをやったら200人も来たと喜んでいたように、潜在的な観客はまだいて、その日田たちにピンク映画が届く方法があれば、それそれでいいのかなと思うのです。
国際的な映画祭で評価される作品もあるように、隠れた名作が発見できるかも知れないし、ちょっと目を向けてみてもいいんじゃないの?と私も思います。
『ピンクリボン』が見られるVOD
映画『パリ、ただよう花』が見られるVODは以下の通りです(2020年5月現在)。
31日間無料
30日間無料
UPLINK Cloudの60本3ヶ月見放題でも見ることができます。
『ピンクリボン』の次に見るべき映画
ぜひ黒沢清監督の『ドレミファ娘の血は騒ぐ』を
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