『續姿三四郎』を続編嫌いの黒澤明はどう撮ったのか

『續姿三四郎』を続編嫌いの黒澤明はどう撮ったのか

1945年、黒澤明が撮った『姿三四郎』の続編。続編嫌いで知られる黒澤明だが、いざ撮ってみればそれなりの作品に仕上げるところはさすが。

映画『續姿三四郎』の概要

前作『姿三四郎』で檜垣源之助を倒し、旅に出た三四郎が2年後に帰ってくる。その途中横浜で、アメリカ兵に殴られている人力車夫を助けてアメリカ兵を海に投げ飛ばし、招かれた大使館でスパーラー(ボクサー)と戦う柔術家に出会うが、三四郎は見るに見かねてその大使館をあとにしてしまう…

続編を作ることを嫌う黒澤が、会社の要求でしぶしぶ作った『姿三四郎』の続編。何かの都合でカットされたのか、フィルムが損傷してしまったのかわからないが、黒澤らしからぬ不自然なつなぎの部分もあり、現存するプリントでは前作にはとても及ばない出来。

1945年,日本,83分
監督:黒澤明
原作:富田常雄
脚本:黒澤明
撮影:伊藤武夫
音楽:鈴木静一
出演:藤田進、月形龍之介、轟夕起子、大河内伝次郎、宮口精二

映像の質は悪いが緊迫感はさすが

さまざまな不満がありますが、それはもしかしたらプリントが悪いせいかもしれない。三四郎と檜垣鉄心の決闘の場面などは何をやっているのかよくわからないほど暗く、そのほかのシーンでもノイズが走っていたり、おそらく数コマ飛んでいるだろうと思わざるを得ないようなつながりになっていたりする。

ということもあってなかなか評価するのは難しいのですが、これだけの映画だとすると他の作品より格段下がってしまうことは確かでしょう。最初のスパーラー(っていったのねボクサーのことを)の試合で、ダウンしたスパーラーと観客と三四郎をモンタージュで見せるところなどはなかなか緊迫感があって、そのあたりの映像の作り方などはさすがと思わせるところもあり、座禅を組んでいたら和尚が寝てしまったなんていうユーモラスな場面もある種の黒澤らしさではあると思う。

それから、戦争直後(なんと1945年製作!)の日本国民のアメリカに対する心情を代弁しているともいえ、またアメリカなんていうのは日本の武士道精神からは外れた鬼畜なんだということを暗に言おうとしているということもわかる。そんなメッセージが読み取れるせいか、全体的になんだかエイゼンシュタインの映画に似ているような印象も受ける。

そして、GHQの検閲でカットされたのかなどという邪推をしながら見たのですが、ざっと調べたところそのような情報はありません。

しかし、本当はもっと長いんだと思ってみていたので、かってに物語を足してみたりしていました。具体的には、途中で出てきた左文字なんたらというのが、姿三四郎の弟子のようになって、そこで新たな「師匠-弟子」の関係が成立し、それによって三四郎が覚醒していくというようなことがあるのかな、と思ってみていたら、左文字はあっさりプロットからフェードアウト。

小夜さんが今度はもっと絡んでくるのかと思ったら、突然最後の別れの場面に言ってしまい、その場面もなんだか切れ切れ。

ということで、文句はたくさんありますが、それでも決してつまらなくならないところが黒澤のすごいところなのか。という気もしました。

『續姿三四郎』が見られるVODは

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