精神病患者と医師の頭脳戦『エレファント・ソング』がサスペンスとして秀逸なわけは

『エレファント・ソング』の概要

精神科病院の院長のグリーンは行方がわからなくなった精神科医ローレンスについて知っているという患者マイケルから話を聞く。マイケルには気をつけるようにと元妻の看護師長にも言われるが、グリーンはローレンスの部屋で2人きりでマイケルに話を聞く。

マイケルは巧みな話術でグリーンの追及をかわし、相手をコントロールし始める。グリーンのもとには姪っ子を預かる妻からの電話も繰り返しかかってきて徐々に追い込まれていく。

Elephant Song
2014年／カナダ／100分
監督：シャルル・ビナメ
脚本：ニコラス・ビヨン
撮影：ピエール・ギル
出演：グサビエ・ドラン、ブルース・グリーンウッド、キャサリン・キーナー、キャリー＝アン・モス

この映画は非常に秀逸なサスペンスだ。マイケルはローレンス医師の行方について様々なほのめかしをしながら、グリーン医師の元妻の看護師長についてもあらぬことを吹き込んだりして揺さぶりをかけてくる。

見ている方も何が真実で何が嘘なのかわからず、グリーン院長と同じくどんどんマイケルの言葉に翻弄されている。そして、何よりもマイケルの本当の狙いがわからないのが怖い。口では退院を求めるけれど、院長の一存でそれを決めることができないのは明らかだし、どうもそれが本当の目的ではないような気がする。

そして話が進んでいくと、マイケルとローレンス医師の関係が明らかになってきたり（それも何が真実かわからないのだが）、グリーン院長と前妻の看護師長の間の亡き娘の存在が心理に影響を及ぼしてきたりとさらに様々な要因が絡み合い、院長は精神的に追い込まれていく。

見ている方もぐるぐると考えを巡らせながら見なければならず、サスペンスとしてすごく面白い。

医者をも翻弄する驚異的な精神病患者というのは小説や映画の世界にはよく登場するが、マイケルもそんな人物の一人として見事に造形されている。マイケルが入院することになった背景も終盤に語られるが、それも含めて非常に良くできた人物像で、最後まで感心してしまった。

映画『エレファント・ソング』が見られるVODは以下のとおりです（2020年7月現在）。

550円/月～
30日間無料

UPLINK CLOUDでも見ることができます。

精神病院を舞台にした名作といえば。