『リーサル・ウェポン』こそ“バディもの”の不朽の名作だ

『リーサル・ウェポン』こそ“バディもの”の不朽の名作だ

破天荒な白人刑事と家族思いの黒人刑事が麻薬組織を追うことになる。すべてが正反対の2人が繰り広げるドタバタが愉快で痛快なアクション・コメディ。

リチャード・ドナーが監督、メル・ギブソンとダニー・グローヴァーが主演したバディものの名作。1980年代の作品で今見るとふるさも感じるが面白さは変わらない。映画はパート4まで製作され、TVシリーズとしてもリメイクされている。

映画『リーサル・ウェポン』の概要

高層マンションの最上階から女が飛び降りる。ロス市警殺人課のロジャー・マータフ部長刑事は50歳の誕生日を娘たちに祝われる。ロス市警麻薬課のマーティン・リッグスは無鉄砲なやり方で銃を乱射する犯人を射殺し、麻薬の売人を捕まえる。自殺事件を担当することになったマータフの相棒としてリッグスが助っ人としてやってくることから物語はややこしくなっていく。

大ヒットシリーズ『リーサル・ウェポン』の第1作。人間くさい主人公たちと泥臭い物語、単純に格好いいだけでない人間味あふれたアクション映画には計り知れないエネルギーがある。続編で増長されていくコミカルな部分もスパイス程度に効いていて非常にいい。

Lethal Weapon
1987年,アメリカ,110分
監督:リチャード・ドナー
脚本:シェーン・ブラック
撮影:スティーヴン・ゴールドブラット
音楽:マイケル・ケイメン、エリック・クラプトン
出演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー、ゲイリー・ビューシイ、ミッチェル・ライアン

バディものはキャラクターが立ってこそ

私はこの映画がすごく好きだ。別に映画史に燦然と輝く名作だと言うつもりはないが、とにかく好きなのだ。もちろん普通にアクション映画として面白い。80年代のアクション映画の中でも屈指のできであると思う。が、一般的にはそれ以上ではない。

しかし、この映画はすごい。なんといっても主人公2人のキャラクターがたっている。自殺志願で命知らずの麻薬課の刑事と、子沢山で過程を第一に考え引退も間近と考えている殺人課の刑事。2人はことごとく対照的である。白人と黒人、進歩的/保守的、などなど。となると、最初は反発しあうというのがパターンなのだが、この映画はそう反発するわけではない。確かにロジャーは最初マーティンを訝しげな目で見つめるが、それは彼の自殺傾向についてであり、捜査の無鉄砲さにではない。つまりロジャーは警察官としての腕という面では最初からマーティンを信頼している。ただ人間として懸念があるというだけなのだ。

そしてロジャーのほうも決して傍若無人の暴れ者であるわけではない。本当は非常に人間的であり、やさしさを持っているのだけれど、妻の死というひとつの事件のために心にぽかりと空洞が開いてしまっている。その空洞を埋めるために仕事に没頭し、いつ死んでもいいと思っている。その結果が破天荒な命知らずの行動に結びついているだけだ。

過剰な格好良さと生み出されるおかしみ

そんな破天荒さは基本的には乱暴さにつながるのだが、それがただ乱暴なだけではなく、コミカルなまでに痛快になる。それは過剰さから来る笑い、やりすぎで、ありえなくて笑うしかない。そんな笑いである。この笑いは『マトリックス』を上げるまでもなく非常に現代的な笑いであると思う。この作品がその先駆けなのかどうかはわからないが、とりあえずまじめにやりすぎておかしくなってしまうとうものを意図的に取り入れたものとしてはかなり新しいものなのではないかともう。それはアクション・コメディという相容れないような2つの要素の融合の始まりでもある。

となるわけだが、そのように説明してみたところでこの映画の面白さは少しも伝わりはしない。メル・ギブソンの行動の細部にまで、そしてプロットに隅々に張り巡らされた伏線によって、この映画は面白くなっているのだ。痛快さと、おかしさと、格好よさと、展開力と、どれをとってもすばらしい。にもかかわらず、どこかにB級なテイストも残っている。「アクション大作」と大上段に構えることなく、とにかく楽しければいいという姿勢がこの面白さを生む。その「楽しい」というのも、別世界的な楽しさではなく、身近にあるような(本当にあったら困るけど)世界の楽しさ、完全無欠のヒーローではない、一人の人間の繰り広げるドラマであるという楽しさ、それがいいんだと思う。

『リーサル・ウェポン』が見られるVODは

映画『リーサル・ウェポン』が見られるVODは次のとおりです(2020年3月現在)。

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