どんなクソ映画でも残す価値はある。『VHSテープを巻き戻せ!』が示すZ級映画の存在価値
映画『VHSテープを巻き戻せ!』の概要
1980年代から2000年ころにかけて一世を風靡したVHS。映画をVHSテープで販売することによって起きた映画業界の変化から、VHSオリジナルの映像作品の誕生、そして衰退した現在もVHSテープを集めるマニアまで、VHSの歴史をたどったドキュメンタリー。映像メディアの栄枯盛衰が映像文化にもたらすものはなにか。
2013年/アメリカ/91分
監督・原案:ジョシュ・ジョンソン
撮影:クリストファー・パルマー
出演:アトム・エゴヤン、ロイド・カウフマン、押井守、高橋洋、バクシーシ山下
どんな映像も残す価値はある
本当にVHSでしか見られない映画というのはあって、そういう映画は買うか、いまだにVHSも扱っているレンタル店に行って探すしか無いのです。
この映画で言われているのは、VHSでしか見られないからと言ってその作品が面白くないとは言えないということで、私もそう思うんですが、この映画で取り上げられている作品は、断片を見ただけでは「うーん、そうか?」と思うような作品がほとんどで、今ひとつ説得力がありません。
私の記憶では、黒沢清監督の『スウィートホーム』は未だにDVD化されておらず、VHSでしか見ることができない映画。原因は権利関係だったと思いますが、いまもVHSでしか見られないはずです。
それはさておき、VHSの魅力を力説する映画で、たしかに一つの時代を作ったし、それをコレクションするマニアが居ることもわかります。でも、だから何だという気もしてしまいます。
ただ、映像が失われていってしまうことは避けるべきで、どんなにくだらないと思われる作品でも、ソフトとして発売されるくらいなんだからどこかいいところはあるだろうし、もしかしたら後の世に何かの役に立つかも知れない。その可能性はあるので、残すことには賛成です。
『ピンクリボン』で日本初のピンク映画と言われる作品が失われてしまっていて、冒頭の数十分しか残っていないというエピソードが出てきます。当時の人からすれば残す価値がない映像だったんでしょうが、50年後にそれが貴重な作品として失われたことを残念がる人が出てくるのです。
だから、いまはなくなってもいいやと思う作品も残しておくことは必要だと思います。
あまりこの映画の感想ではなくなってしまいましたが、そんなふうに映像文化の歴史に思いをはせるにはいい映画で、それ以上でもそれ以下でもないというのが私の感想です。
全体的に編集が細かくて、証言者の発言を細切れにしてつないでいるので、ちょっと見づらいかったのもいまいち共感できなかった理由かもしれません。
『VHSテープを巻き戻せ!』が見られるVOD
映画『VHSテープを巻き戻せ!』が見られるVODは以下のとおりです(2020年6月現在)。
30日間無料
現在、UPLINK Cloudの60本見放題プランでも見ることができます。
『VHSテープを巻き戻せ!』の次に見るべき映画
幻の映画という意味では見ても面白いのでは
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