2020年2月3日

黒澤明『わが青春に悔なし』原節子の美しさが光る戦後第一作

第二次大戦中に映画監督としてデビューした黒澤明の戦後第一作は、反軍国主義的カラーに染まった戦後らしい作品。厳しい制作状況の中でも原節子の美しさを引き出して魅力的な映画をつくった。 映画『わが青春に悔なし』の概要 満州事変のころ、「京大事件」がおきた。京大の教授八木原の弟子である野毛は7人の仲間と、教授の娘幸枝とともに政府に反対し、議論を繰り広げていた。野毛は学生運動を組織し、デモを行い逮捕されてし […]

黒澤明『素晴らしき日曜日』コメディでもリアルな戦後を描く

黒澤明が1947年に撮ったヒューマン・コメディ。ある恋人の休日をモチーフに、同時代の観客に時代について問いかける意欲作。 映画『素晴らしき日曜日』の概要 日曜日ごとのデートを楽しみにしているふたり、しかしふたりとも貧乏で今日はふたり合わせて35円しかない。それでも必死に楽しく過ごそうとする昌子だったが、雄造はどうにも憂鬱で昌子の気分について行くことが出来ない… 戦後の暗い世相の中必死に明るく生きよ […]

黒澤明と三船敏郎の初タッグ『酔いどれ天使』は時代を描いた人間ドラマ

黒澤明がほぼ新人の三船敏郎をはじめて主演に迎えて撮った野心的なドラマ。終戦直後の混沌とした時代を舞台に、三船は若いヤクザものを演じ、志村喬が医者を演じた。 映画『酔いどれ天使』の概要 闇市近くの薄汚れた建物に医局を構える眞田医師、そこにしゃれた風体の男がやってくる。男は手を打たれており、手から弾丸をとりだすが、咳が気になった眞田医師は結核の診察もして、その男に「肺に穴が開いている」と告げると、男は […]

黒澤明『野良犬』戦争直後の日本はこうだった。閉塞感がひしひし伝わる

黒澤明が戦後のドヤ街を舞台にスリを追う刑事の姿を描いたサスペンスドラマ。暗い世相を描きながらそこかに希望も感じさせる作品。 映画『野良犬』の概要 暑い夏のある日、訓練を終えて家路についた新人刑事の村上は満員のバスの中を降りたところでピストルを盗まれたことに気づく。あわてて犯人らしき男を追うが逃げられ、上司に報告するとスリ専門の部署に行くように言われた。そこで仲間と思われる女に見当をつけた村上はそこ […]

黒澤明『静かなる決闘』は戦後日本の鬱屈を豪雨で表現

軍医として従軍した医師の苦悩を描いた黒澤明の現代劇。1949年の大映作品で若き三船敏郎をはじめとする役者の魅力が詰まった作品。 映画『静かなる決闘』の概要 第二次大戦に軍医として従軍した医師の藤崎は手術中にメスで手を切ってしまうが、そのまま手術を続ける。そして後日、その患者が梅毒であったことを知り、検査をしてみると自分も梅毒に感染していることが判明した。復員した藤崎はそのことをともに病院でも働く父 […]

志村喬が目で語る『生きる』で黒澤明が引き出した役者たちの魅力

黒澤明が志村喬主演で撮ったヒューマンドラマの傑作。30年間何もしてこなかった公務員の男が自分の死期を悟り、生きることの意味を探っていく。 映画『生きる』の概要 とある市役所の市民課長を務める渡辺はただ何もしないことで、30年間勤めを果たしてきた。そんな彼が突然役所を休む。胃に違和感を感じたので検査をしに病院に行ったのだ。待合室で、ほかの患者としゃべった彼は自分が胃癌であると確信するに至る。自分の命 […]

映画史に残る『七人の侍』3時間半が短く感じる黒澤明の仕掛け

世界中の映画製作者に影響を与え続ける黒澤明映画の金字塔。三船敏郎演じる野武士が侍たち、百姓たちを巻き込んで繰り広げる3時間半の大スペクタクル。これを見ずに映画を語るなかれ! 映画『七人の侍』の概要 時は戦国時代、野武士の来襲に怯える山間の農村、村人たちは知恵を絞り、村の長老の忠告に従って、食事を供するという条件だけで村のために戦ってくれる浪人者を探すことに。そのために4人の百姓が町に出たが、なかな […]

『生きものの記録』黒澤明の社会派ドラマは三船敏郎の怪演が圧巻

黒澤明が原水爆をテーマに、家族を巻き込んで騒動を起こす老人を描いた社会派ドラマ。三船敏郎が老人役を怪演したが、興行的には成功しなかった。 映画『生きものの記録』の概要 家庭裁判所の参与員をやっている歯科医の原田のもとに裁判所から電話がかかってくる。今回の懸案は原水爆と放射能に対する恐怖から、全財産を売り払って家族全員でブラジルに移住しようとする工場主の中島老人を、家族が準禁治産者に認定してもらおう […]

黒澤明が『蜘蛛巣城』で表現した「マクベス」の怪奇と狂気

黒澤明がシェイクスピアの「マクベス」を戦国時代に置き換えて撮った圧巻の時代劇。一見、冗長な展開の奥に潜む狂気と怪奇が現代的な意味を考えさせる。 映画『蜘蛛巣城』の概要 戦国時代、難攻不落の蜘蛛巣城の城主・都築国春に使える二人の武将鷲津武時と三木義明は敵の襲撃を追い払い、城主にそれを伝えるため城に向かった。しかし慣れているはずの城下の森で迷ってしまった。二人は物の怪の声をきき、その声を追っていくと、 […]